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移調楽器について移調楽器とは はじめて管楽器を吹く人、特に吹奏楽部に入ったばかりの中高生は移調楽器という言葉を知らないことがほとんどです。 特に音感のある人は「ドの指で吹いているのにドじゃない音が出てる?」という違和感を感じることがあります。 それが移調楽器です。“楽譜に書いてある音と実際に出る音がずれている”楽器のことを指します。 例えば同じ楽譜を見てフルートとクラリネットが一緒に吹いてみると、実際に出る音(実音)がすべて1音ずれていて合わないという事態になります。 管楽器の楽譜を書く編曲者はこのズレを予め計算した上で、その楽器を吹く人にとって見やすく吹きやすい楽譜を作ります。
なぜ移調してあるの? 楽器の構造上で最も簡単で覚えやすい運指の並びを「ドレミファソラシド」にしてある楽器が多いためです。 実音での「ドレミファソラシド」をそのまま運指で「ドレミファソラシド」にしてしまうと複雑なフィンガリングになってしまいます。 また、アルトサックス・テナーサックスなど形と構造が似ている同属楽器では管の長さによって出る音が違うため、運指を共通にすることで持ち替えても吹きやすくなっています。 そのほか楽譜上での臨時記号(♭や♯など)を減らすためとも言われています。
音の呼び方 カタカナの「シ♭」ではなく、アルファベットで「B♭」と書いてあるのはどういうこと…?と混乱する初心者は多いと思います。 楽譜上でも「in B♭」「in Si♭」といった表記がよくあります。チューナーでもアルファベットが表示されますね。 日本で有名な「ドレミ」といった音名は本来イタリア語で、アルファベットで書かれるものはたいてい英語やドイツ語で書いた時の音名です。 さらに日本語にも音名を指すものがあり、それぞれ同じ実音でまとめると下記のようになります。
楽譜/運指上の音のことはカタカナ、実音はアルファベット等で表すことが多いです。 ♭(フラット)はbと書かれることもあります。 音名=実音、階名=運指上の音のことを指します。
つまり、 B♭管の楽器=ドの指で吹くと実音B♭(シ♭)が鳴り、楽譜はinB♭で書かれている移調楽器 C管の楽器=ドの指で吹くと実音C(ド)が鳴り、楽譜はinCで書かれており移調楽器ではない ということです。
ちなみにフルートには「アイスレバー」と呼ばれるキイがあり、アイス=Ais=ラ♯という意味でA♯(=B♭)を出すときに使うキイです。
移調楽器の種類 改造して特別な移調楽器となった楽器は探せば世界のどこかに存在すると言われています。 また、同族楽器でごく稀に使われるような移調楽器もありますが、ここでは一般的でメジャーな楽器のみを紹介します。 ここに書かれていない管楽器は基本的にC管(C調)が多く、ドレミファソラシドを演奏するとそのままドレミファソラシドと鳴る楽器と思って良いでしょう。
「B♭管(べーかん)」運指ド/レ/ミ/ファ/ソ/ラ/シ/ド=実音シ♭/ド/レ/ミ♭/ファ/ソ/ラ/シ♭になる楽器 B♭クラリネット…クラリネットの中で一番メインとなる、いわゆる普通のクラリネットです。 バスクラリネット…ベースの役割をもつクラリネット。 ソプラノサックス…管がまっすぐで高音域が出せるサックス。 テナーサックス…中低音域でメロディーも伴奏も担当します。 トランペット…吹奏楽で使われるトランペットはほとんどB♭管です。オーケストラ等ではC管もよく登場します。 フリューゲルホルン…名前にはホルンと付いていますが、トランペット奏者が持ち替えで吹くことが多い楽器です。 フレンチホルン…どちらかといえばF管のほうがメインですが、B♭管のシングルホルンも普及しています。 トロンボーン…楽器はB♭管ですが、楽譜はinCで書かれることがほとんどです。 ユーフォニアム…楽譜はinCで書かれることが多いです。 チューバ…E♭管のものもありますが楽譜はinCで書かれることが多いです。
「E♭管(えすかん)」運指ド/レ/ミ/ファ/ソ/ラ/シ/ド=実音ミ♭/ファ/ソ/ラ♭/シ♭/ド/レ/ミ♭になる楽器 E♭クラリネット…E♭と書いてエスと読むため、エスクラと呼ばれます。少し小さいクラリネットです。 アルトクラリネット…B♭クラリネットより長く、少し低い音が出せるクラリネット。 アルトサックス…サックスの中でも一番吹く人が多いメジャーなサックスです。 バリトンサックス…ベースの役割を担い、「バリサク」と呼ばれることが多いサックス。
「F管(えふかん)」運指ド/レ/ミ/ファ/ソ/ラ/シ/ド=実音ファ/ソ/ラ/シ♭/ド/レ/ミ/ファになる楽器 フレンチホルン…セミダブル/ダブルホルンはF管がメインとなります。F管/B♭管以外の調子のホルンもたくさんあります。 イングリッシュホルン…オーボエの同属楽器で中低音が出せる楽器。コールアングレとも呼ばれます。 バスフルート…C管が特に主流ですが、F管やG管のものもあります。
「A管(あーかん)」運指ド/レ/ミ/ファ/ソ/ラ/シ/ド=実音ラ/シ/ド♯/レ/ミ/ファ♯/ソ♯/ラになる楽器 A管クラリネット…見た目はB♭クラリネットとほぼ同じですが、少しだけ長くなっているクラリネットです。
「G管(げーかん)」運指ド/レ/ミ/ファ/ソ/ラ/シ/ド=実音ソ/ラ/シ/ド/レ/ミ/ファ♯/ソになる楽器 アルトフルート…普通のフルートより低い音が出ます。 バスフルート…C管が特に主流ですが、F管やG管のものもあります。
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