|
クラリネット 出荷前調整と定期メンテナンス
クラリネット 出荷前調整と定期メンテナンス
店頭で買ったら、事前に調整してもらえるでしょうか。日々の変化においては仮に店頭購入したからといって安心できないのです。
▼調整について
▼調整と精度について メーカーから弊社へ納品される楽器の状態は、安い楽器はしっかり調整されていない状態が多く、高い楽器はしっかり調整された状態で届く傾向にあると思います。これは元々の楽器の精度の問題と、コストの問題があります。 仮に精度の違う楽器に対し同じ作業工程で調整をしたとしても安い楽器の方が楽器の精度が悪いため、手間と時間がかかります。つまり、安い楽器においてはある程度許容範囲の状態で検品にクリアしないと、人件費=コストが上がってしまうので、安い値段で販売ができなくなります。安いものが値段なりであるのはこういうことです。 精度の悪い楽器は精度の高い楽器より調整の幅が狭く全体のバランスを調整するには技量が必要となります。キィが沢山ある楽器ですので、1つの箇所に手を入れるとどこか違う部分で状態が変わります。そこをまた修正して...という作業が続くわけです。安い管楽器の扱いや修理の持ち込みが敬遠されたりする背景にはこともあるかもしれませんね。上記の通りとなり、安い楽器(精度の悪い楽器)ほど調整をすることによって起こる状態変化の振り幅は広いと言えます。
▼クラリネットの定期メンテナンスは半年に1回くらいがおすすめ。 管楽器は定期メンテナンスが必要と言われます。基本的に調整は楽器の構造とその作業技術を学んだ技術スタッフが行うもので、プロでも個人で行う方は殆どおられません。たまに安い楽器にドライバーなど入っていることもありますが、まず使わない方が良いでしょう。楽器は使用してもしなくても状態変化は進行していきます。また楽器によって推奨される定期的なメンテナンスの頻度が変わります。それは楽器の構造、使用されているパーツや素材が異なるからです。例えばフルートは紙や小さいネジで微調整がされているためかなりデリケートで1週間という短い期間でもバランス等が大きく変化こともありますが、クラリネットは比較的頑丈なキイとタンポを接着剤でしっかり固定する特性から正しい取り扱いをすれば比較的バランスは崩れにくい傾向にあります。ただ、クラリネットでもメーカーや品番によって使用されているタンポが違うことがあるのでその点で耐久性や撥水性が変化します。使用頻度や使われているパーツなどは個人によって異なり、ちょっとしたバランスの崩れはなかなか気づきにくいためあくまで目安とされていますが、当店技術スタッフの見解としては1年に1回以上のメンテナンスをお勧めします。気がつかない間にキィに負荷がかかってしまっていていつの間にか連動が狂っていたといったこともよくあるケースです。また、使用頻度にもよりますがお手入れしていてもいつの間にかタンポが傷んでいたりコルクが取れてしまっていたり...ということもあると思います。長期間メンテナンスに出さずにいるといつの間にかが積もって複数のパーツ、タンポ交換を必要とする場合も出てきてしまう可能性もあり、1回の調整代金が多くかかってしまうことがあります。こまめにメンテナンスに出すことで楽器の異常にも早期に気づくことができ、1回あたりのパーツ、タンポ交換も少なく済み調整代金を抑えることが出来るのではないでしょうか。常に万全な状態で演奏するためにも年に1〜2回程度のメンテナンスをお勧めします。
▼調整をしていない楽器、メンテナンスをしていない楽器はどうなるの? 調整が崩れた楽器とは全部の部品に少しづつ緩みある状態だと想像してみて下さい。1つの箇所だけであれば全体への影響は少ないかもしれませんが、その少しづつの誤差を全て足したら大きな誤差になりますよね。1箇所の部品が完全に外れていれば気づくかもしれませんが、ちょっとづつではなかなか気づくことができません。あなたにとって急な故障でも経年劣化は日々の積み重ね。楽器の状態は徐々に進行しているのです。
・タンポが劣化し破れることによって、キィを抑えてもきっちり抑えきれず息漏れが発生し音が出しにくくなります。また、タンポには緑青や汚れが付着しやすく不衛生な状態になってしまうこともあります。 ●連動キィ以外のキィ調整
以下のキィに対しタンポと音孔の隙間がないか目視確認し、その後、フィラーゲージをキィに挟み抵抗があるかどうかを確認します。
●連動キィ調整
以下のキィについている調整ネジやキィの角度を調整して1つ1つのキィがしっかりと閉じるように調整します。
●連動キィに付随する調節ネジの調整
●ジョイントの嵌合確認 新品のクラリネットはジョイントのコルクが馴染んでおらず脱着には力が必要になる場合が多いです。コルクは使用するにつれ消耗するパーツで緩くなった場合には息漏れなども発生してしまうため、いずれはコルクを交換する必要があります。すこしでも長くご使用いただけるよう使用に可能な範囲で固めで、尚且つ取れないということがないようコルクを削るなどして微調整を行います。 また、当店でセットにしている別ブランドのマウスピースにおいては組み合わせによってはコルクの厚さを調整しないとまず取り付けができない場合があるため削って調整を行います。
<ポイント>
ピボットネジとはキィを支えるネジでそのネジにドライバーを挿し込みキツく緩んでいないかを確認しますが、メーカーやモデルによっては締めすぎてしまうとキィの動きに関わる部分であり適度な締め具合が必要となります。技術スタッフだからこそ判断できる重要な部分です。
・最低音からレジスターキィを押したドの音まで吹いて正しくなっているか確認します。 ・最低音が問題なく出せるどうか確認します。
・息のスピードを遅くした状態でも許容範囲かどうか確認します。
●掃除
・本体内部(特にバレル、上管内部)の水分を除去します。
●外観に凹みなど異常がないか確認します。
|