管楽器/安い楽器と高い楽器の違い

▼一般的に「ヤマハ」がなぜ吹奏楽におすすめかと言われているか
日本で楽器といえば一番にヤマハというブランドを思い浮かべる方が多いと思います。日本の音楽の歴史の中でヤマハというブランドは多く活躍し、また学校教育の中でも多用されています。知名度の高さはともかく、吹奏楽はヤマハ基準で考えられることが多く、安い楽器はダメだという方も多くおられます。ヤマハが大事にしていることは「奏者が音楽に集中できる楽器設計」「きちんと音程が取れる音程設計」「奏者が意図する音楽表現ができる楽器」「安心して長く使える楽器」。他のメーカーもその良さを認めるほど、このクオリティは高く信頼のおけるものです。さらに安いものは存在しますが、価格を下げればヤマハの持つ理念を保つことができないということでしょう。ヤマハはその品質に自身を持ち、その品質において価格を下げる必要性もきっと感じていないと思います。楽器価格には品質は比例します。基準となるその楽器の価格帯を知らない人や自身の所得からヤマハの一番安い楽器でさえも高く感じる人はいると思いますが目安としてその価格でもって品質を維持できるというように捉えてもらえれば良いと思います。ただし、人にはそれぞれ考え方や置かれる環境があります。楽器を選ぶ上で必ずしもこの4つの項目が絶対条件とうことではありません。しかしながら何故これらが重要なのかを知り、納得してお金を出すことは大事だと思います。

▼楽器の設計
精度もそうですが値段の違いは仕様にもあります。メーカーやモデルによって初心者に吹きやすいキイ、レイアウトなどに工夫があります。演奏する曲などによって効率性を感じる部分もありますので初心者にはちょっと判断が難しい部分でもあります。「吹きやすい」というのは「音を出しやすい」ということだけではなく、指がスムーズに動かせるかどうかということも関係します。同じ技量を持っているのに持つ楽器によって上手く演奏できる場合とできない場合があるなんて少し残念ですよね。ネットで楽器を買う場合、色々調べて買うと思いますが実際のところどうなのかは分からないと思いますし、調べても分からない、また調べることすら面倒だと思う人もおられると思います。楽器を買う人の中には「失敗したな」と思う人もおられると思います。価格だけに飛びつくとそういう結果になる可能性が高いと思います。管楽器には基本、基準ががあり知識も必要です。ある程度のお金を出す、定番品を買うというのは安心感にお金を出すところもあると思います。例えばヤマハはある意味スタンダードでオールマイティ。無知で楽器を買っても失敗したとなる可能性は低いんではないかと思います。例えば同じものを安く買うのと違い、品質を落として下のランクのものを選ぶというのはどこかに妥協点があって納得するものだと思うのですが、それを確信していなかったり、想定していた感じと違っていたら失敗したなぁ、となると思うのです。人それぞれであることは大前提ですが、多くの人にとってヤマハが基準と言われるのは不満がない楽器として最低限のだと思います。誰しも安くて良いものが欲しいと思うのですが、品質と価格はある程度比例します。よってよっぽどの理由がない限り、相場の価格以下で同じ品質を手に入れるのは難しいです。いくらくらいで安定した品質を手に入れられるかを見極めるためにはこれまたヤマハの価格を参考にしてみて下さい。国内管楽器においては基準とされるヤマハ価格帯に対しその製品の品質が下か上かで値付けをする傾向にあります。よって同ランクの別ブランドの製品はヤマハの売価の少し下をくぐってきたりしています。(ヤマハはやっぱり売れるブランドなので、対抗馬として販売される)ヤマハよりかなり下の価格帯のものは品質ではもう対抗せず価格で対抗しているので品質では差があるということはお察しいただけると思います。安い価格にも高い価格にもちゃんと理由があるのです。

▼きちんと音程が取れるということ
音程にシビアでなければ気づかないかもしれませんが、管楽器はいつでも同じ音程で音が鳴るとは限りません。気候や口の形、吹き方に大きく影響されます。吹奏楽では大勢で綺麗なハーモニーを奏でるため日々正しい音程で音が出るよう特訓しています。チューナーを見ながら音を出し狙った音程になるように楽器と吹き方で調整します。当然ヤマハだから常に正しい音程がでるということでもありませんが、全音域で均一な吹奏感と音程が出せるところを目指して製造しているヤマハと、低価格帯の楽器では目指すところも異なりますので、ヤマハはより安定しているという結果が生まれるのだと思います。精度の悪い楽器を手にした場合、演奏云々よりもピッチの安定に技量を使い「良い演奏」に集中できないということがあるかもしれません。どれだけピッチを気にされるかはひとそれぞれなのですが、人と一緒に演奏する時点でピッチを求められることは確かです。

▼奏者が意図する音楽表現ができる楽器
良いとされる楽器は音質と音量の幅が大きいこと。奏者の意図する表現がその楽器でできるかどうか。クオリティはともかくこちらのモデルをはじめ低価格帯の楽器は初心者が吹きやすいことが重視されています。入れた息が音になりやすいといった感じでしょうか。しかし上級者にとって、これだけでは求める音質と音量は得られません。例えばとても小さな音を吹いた場合、ただ吹きやすい楽器では柔らかな小さな音のコントロールが難しいため段々と小さくすることができず、音がプツっと切れてしまったりします。また逆に大きい音を出すために息を沢山入れれば、楽器のキャパを越えてしまい音が割れて綺麗な音色がでなかったりします。肺活量がコントロールできる上級者にとってはその息づかいがちゃんと表現できる精度の楽器が必要になります。入れた息をを跳ね返す力を抵抗といい、上級者にとっては適度な抵抗感は大事なポイントです。高い楽器だから誰が吹いても良い音がでるわけではなく、良い音が鳴らせる可能性があるのです。

▼安心して長く使える楽器
販売されている商品の中には日本国内のブランドと海外のブランドがあります。海外のブランドには日本の代理店メーカーが販売しているものと、代理店を通さずして直輸入されているものがあります。直輸入品は偽物みたいに思われる場合がありますが、日本の楽器業界において偽物はあまり見かけないような気がします。そもそも楽器は誰もが買うものでもないのでコピー品つくるほどでもないんでしょうね。(セルマーとヤマハのサックスに疑わしいのが一部あるような気がしています。)国内の管楽器業界は結構狭いです。よって互いの範疇もある程度分かっています。よって販売元が楽器店ではない、国内代理店メーカーを流通していない、価格がありえない価格、というところで本物ではないだろうと推測されます。国内で偽物を手にする可能性は外国人バイヤーや個人輸入から買う場合ではないでしょうか。国内代理店を通し販売されている海外ブランドは一定の基準を満たしているかどうか代理店によって確認されていて、尚且つ保証書が付いていると思います。直輸入はそれがなかったり、個体差や品質が安定していない海外製品などにおいてリスクが高いです。良いものはそう簡単に安くなりません。海外ブランドと代理店との契約が終了しても一定期間は代理店側での対応、また違う代理店へ移行されたりします。国内にメーカーをもつ大きい会社の強みは保証面で安心が高いです。製造を自社に置く会社は当然パーツ共有もスムーズです。

そういった楽器のアフターの面では上記のようなバックボーンがあり、さらにもう１つ大事な点があります。ヤマハだけに限らずまず管楽器のメーカー無料修理の範囲は決して広くありません。会社がしっかりしてようが保証書が付属していようが修理はほぼ有償だと思っていただくのが良いかもしれません。毎日練習する方にとっては耐久性も非常に大事です。精度が良い楽器は部品の耐久性もよかったりします。誤解していただきたくないのが高い楽器が壊れないのではありません。同じように同じ回数使用した場合における経年劣化の違いが耐久性の違いとして表れます。故障する原因の多くが実は耐久性などとは関係のない使用者側の不備にあたります。保証書における「自然故障」は「普通につかっていて壊れた場合」ではありません。「取扱説明書および注意書きに従って使用したにもかかわらず発生した故障」なんです。意外と見落としがちですよね。「取扱説明書および注意書きに従って使用」というのは正しい取り扱いと正しいお手入れということです。誰が正しいと判断するのでしょうか。お客様がどんなに正しいと主張していても結果は楽器が破損した状態を見ての判断となりますので、店ないしメーカーなのです。その結果、残念ながら多くの場合、組み立て時にかかった負荷やお手入れ時に気づかずに行っていた行為なのです。高い楽器も安い楽器も楽器の構造や特性に大きな違いはありません。よってお手入れや組み立てにおいて発生するトラブルへの影響はほぼ同じです。むしろ高い楽器の方がよりシビアになる必要があり、またかかる修理代も高いかもしれません。管楽器を通販で買える時代、色々な情報があるにも関わらず、それを知らずして使用している人の多さ、また正しい知識が消費者に届いていない現状があります。保証書が付いていることに安心はしないで下さい。管楽器はお手入れ・セッティングなど最低限の知識が必要になる楽器です。また楽器の状態は保管・使用するにつれ変化を伴います。管楽器はアフターサービスを必要とする楽器とされています。それは楽器として機能するための構造と特性であり使わず長く置いていても故障する可能性もあり、どんなに大事に使っていても気づかないうちに壊してしまうこともあるのです。少しでも長く良い状態で楽器を使えるように心がけましょう。

▼調整について
保管によって状態変化があります。しっかりと調整されていないと音程感が悪かったり音がならしにくいことがあります。高い楽器は調整の幅が広く、崩れたバランスを立て直すためにも十分にかけることができます。状態変化においては調整の作り置きは意味がありません。また使用における変化もあります。分かりやすく言うとパーツはネジによって可動するとします。使用する度にネジが少しづつ緩んでいきます。緩まないくらい強くネジをしめると今度は動かなくなりますのでネジは適度なかたさで締められています。正しく動作させるには緩まったネジはまた締め直さなければなりません。楽器はメーカーから販売店へ出荷されるとき100%の状態を目指して調整されて出荷されます。楽器によって保管による状態変化の違いはありますが、ただ置いているだけでもその状態は90%、80%...と少しずつ良いとされる状態から変わっていきます。管楽器を調整してお客様へお届けするというのは厳しいチェックを最低でも２回クリアし、100％に近い楽器の状態でお渡しするということです。使用後、突然音がでなくなったら故障だと気づくかもしれませんが、徐々に起きる変化には気づきにくいもので、その状態の楽器に慣れて演奏してしまってる可能性だってあります。楽器のポテンシャルを十分に発揮した状態でご使用いただくためにも管楽器は定期メンテナンスが必要と言われています。気にしない人もいるとは思いますが、異音がしたり音漏れがしたりピッチが安定しなかったりと自分だけに留まらない問題点も中にはあるかもしれません。

▼それでもご予算がない...趣味程度の方に

例えば中国製の楽器に対し否定意見をお持ちの方の多くは、きっと演奏する技術と耳を持った方でしょう。実はヤマハもスタンダードモデルの多くが中国やインドネシアで生産されています。国産の楽器を手をするのに数万では今は無理かもしれません。さらに言えば今の時代中国製って結構高いんです。台湾製はさらに高くなりました。時代はかわったものです。全ての方が本格的な演奏を想定しているわけではありません。管楽器の現場は人に求められる音や技術も高い世界です。あなたは今どういう演奏したいか想像できますか？初心者には難しいですよね。練習し技術と耳を養ってこそ自分の演奏の方向性が見え、楽器を選ぶ要素となります。1台目に高額なお金を出して故障させたり違うものが欲しくなったりするよりも、楽器をちゃんと知ってから買うのも1つの手段です。ヤマハクラスになると調整管理がされていなくてもそこそこ楽器の状態だったりしますが、低価格帯の楽器は個体差も多く調整の振り幅も大きいです。楽器のクオリティは変わりませんが、できる限り良い状態にできるのも調整技術なのです。高い楽器を買ったからといって楽しい音楽生活がその先にあるとは限りませんし安い楽器を買うことが失敗ではありません。自分がどれだけ何を求め、何を求められる環境にあるか、まずはそこで自分に必要な楽器がどのランクのものかをみて下さい。その価格が今の自分に出せるか、出せないなら、どこを妥協していくかです。