|
金属変色と木管マウスピースについて変色について 楽器に使われる素材は様々ですが、その特徴や組み合わせによって金属部分が変色することはたびたびあります。 木管のマウスピースは楽器と一緒に入れるのは良くない…と聞いたことがある方も多いと思いますが実際のところどうなのか、その理由と正しい対策方法についてご紹介します。 また、空気や皮膚に触れることによる金属の変色についても紹介しています。
木管マウスピースの主な素材 クラリネット、サックスのマウスピースに使用される素材は下記のものが主流です。他には木製やガラス製のものも存在します。
・樹脂 主にフェノール樹脂、ABS樹脂、ベークライトなど合成樹脂のことで、熱で溶ける素材です。 クリアで明るい音色と反応の良さが特長で、コストも低く鳴らしやすいため初心者や練習用に向いています。 楽器本体を購入した時に付属品として入っているマウスピースはこの素材が多く、より吹きやすいものや本番のために自分に合ったエボナイト製のマウスピースを別途購入する方が多いです。
・エボナイト(ハードラバー) ゴムに硫黄などを加えて熱で硬化させたものです。外観が黒檀(エボニー)に似ているためエボナイトと呼ばれています。 環境変化、酸、アルカリに強く、鳴らしやすさと耐久性を兼ねているため木管マウスピースとしては昔から普及している素材です。 幅広い演奏ジャンルや奏者側のコントロールに対応した柔らかい音色が魅力で、ラインナップも多岐に渡ります。
・メタル 金属製マウスピースのことで主な材質は真鍮、アルミ合金、ステンレスなど。表面に銀メッキ/金メッキなどがかかっているものがほとんどで、メッキの種類によってもわずかに音色が変化します。 パワーのある硬めの音色が特徴で、特にジャズ/フュージョン/ファンク/ロックの奏者に好まれますが 抵抗感が強く、しっかり鳴らすためにはパワーが必要なため中〜上級者向けとなります。
エボナイトによる変色 エボナイトには硫黄が含まれており、また使用中に硫黄を発生させるため銀など他の金属を硫化させてしまうことがあります。 黒っぽく変色するのは酸化、赤や青が混じったような変色を起こすのが硫化という傾向があります。 銀メッキの塗装がされている楽器とエボナイトのマウスピースを同じケースに入れて保管すると楽器側の銀メッキがひどく変色を起こすことがありますので、 できるだけマウスピースは楽器と別のところに入れて保管するのがおすすめです。 また、メタルマウスピースの中には歯が当たる部分(ティースガード)だけがエボナイトになっているものもあり、マウスピース自体がそのエボナイトのせいで変色を起こすことがあります。 これについては通気性のいいポーチに入れたりするなど、箱に入れたり密閉しないことが効果的な対策です。 それでもなお変色を起こしてしまうことはありますので、気になる場合は下記「☆変色除去方法」を参考にして下さい。
金属の変色について 管楽器に使用される主な金属を、変色したりくすみやすいものから並べるとおおよそ以下の順番になります。
・塗装されていない真鍮(ブラス)…空気に触れるだけでも表面がくすんでいきます。 ・塗装されていない白銅/洋白(洋銀)…真鍮ほどではありませんが空気によって表面がくすんだり、汗や水分で変色を起こします。 ・銀/銀メッキ…硫黄に触れることにより激しく変色を起こします。酸素や汗によっても黒っぽい変色を起こします。 ・ニッケル/ニッケルメッキ…水分や油分によって薄くカラフルな皮膜が発生します。経年劣化により次第にツヤが失われます。 ・ラッカー塗装の真鍮(ブラス)…柔らかい塗装のため経年劣化によって剥がれやすく、その部分からくすみが発生します。 ・金/金メッキ…純度の高い金であればめったに変色しませんが、稀に硫黄や酸素によってカラフルな変色を起こすことがあります。 ・プラチナ/プラチナメッキ…金と同じくめったに変色しませんが、稀に銀と同じような変色を起こす可能性があります。
ほとんどはラッカーやメッキで塗装がされているためすぐには変色しませんが、「アンラッカー」や「ヴィンテージ」と呼ばれるものはわざと表面をくすませるためにしっかり塗装を行っていないものが大半です。 また、高価な銀/金/プラチナは素材の特長を活かすため塗装を行わないことがあります。
☆変色除去方法 上記の変色やくすみは下記の方法で除去できる事が多いです。ただし、研磨ですのでやり過ぎると塗装が剥がれたり素材が薄くなります。 また、楽器の組立に関わる箇所(フルートジョイント部分、サックスネックジョイント部分、金管楽器抜差内管、トロンボーンベルジョイント部分、トロンボーンスライド内管など)には行わないようにしてください。 ジョイント部分がゆるくなってしまい、楽器を落としてしまうリスクが高くなったり、息漏れがするなど吹奏感にも影響を与えてしまいます。 研磨剤によってはメッキに向かないものもございます。使う際は必ず使っていいものかどうかを確認をおすすめします。 そのほか除光液は塗装剥がれのほかパーツの破損にもつながりますので楽器には使用しないようご注意下さい。
・塗装されていない真鍮(アンラッカー/ヴィンテージブラス) 新品状態では光沢のある綺麗な外観である場合もありますが、使用するにつれ表面がくすんだり黒ずんできます。そのためにわざと塗装がされていない場合がほとんどですので、研磨剤を使って除去する必要はありません。 指紋や汚れは乾いたクロスで拭くか、メタルポリッシュを数滴付けたガーゼやティッシュで軽く拭く程度にします。
・塗装されていない白銅/洋白/洋銀 汚れは基本的にガーゼやクロスなどの乾拭きで除去します。 隠れる部分に使われていることが多い素材ですが、どうしても気になる場合はメタルポリッシュやグラノール(べノール)など金属用の研磨剤を付けたガーゼ等で軽く擦って除去します。 その後、研磨剤を別のガーゼやクロス等で拭き取ります。アルコールを付けた布で拭くと研磨剤や汚れが取りやすいです。
・表面が銀/銀メッキのもの 軽いくすみやうっすらとした変色であれば研磨剤が含まれているシルバークロスで拭くだけでも除去できることがあります。 濃い変色や黒っぽい変色が起こったときはシルバーポリッシュなど銀用の研磨剤をティッシュやガーゼ、綿棒に少量付けて軽く擦って除去します。 それでも取れない変色はメタルポリッシュやグラノール(べノール)など金属用の研磨剤で同じように磨きます。 その後、研磨剤を別のクロスやティッシュ等で拭き取ります。アルコールを付けた布で拭くと研磨剤や汚れが取りやすいです。 なお、銀メッキが剥がれていたり部分的に薄くなると、そこから変色やくすみを起こすことがたびたびあります。
・表面がニッケル/ニッケルメッキのもの ぬめりやうっすらとしたカラフルな皮膜はエタノールなどのアルコールを付けたガーゼで拭くと除去できます。 濃い変色やくすみはメタルポリッシュやグラノール(べノール)など金属用の研磨剤を付けたガーゼやティッシュで軽く擦って除去します。 その後、研磨剤を別のクロスやティッシュ等で拭き取ります。アルコールを付けた布で拭くと研磨剤や汚れが取りやすいです。
・表面がラッカー塗装のもの 小さなキズや経年劣化、手の垢が付着してくすむことがありますが、ラッカーポリッシュを付けたガーゼやクロス等で軽く拭くことで改善できます。 それ以上磨いたりするとラッカーが剥がれますので必要以上に行わないようにしましょう。また、アルコールで拭きすぎることもラッカー剥がれの原因になります。 ちなみに火気を当てるとラッカーが焦げて茶色く変色しますが、これは研磨を行っても除去できません。 透明以外のカラーラッカーはアルコールを付けると色が落ちますので注意して下さい。
・表面が金/金メッキ、プラチナ/プラチナメッキのもの あまり変色は起こりませんが、もし起こった場合はメタルポリッシュやグラノール(べノール)など金属用の研磨剤を付けたガーゼで優しく拭きます。 残った研磨剤や手の垢などの汚れはアルコールを付けたガーゼで拭き取りましょう。
|