フルートの主な素材と特徴
フルートといえば銀色の楽器というイメージが強いですが、それは銀メッキという塗装がメジャーなためで、
塗装の下にはフルートに向いているとされる様々な金属が使用されています。
楽器は価格が高いほど良いと思われがちですが、高価な素材になるほど楽器が重くなる傾向にあり、しっかり鳴らすための息の量や繊細なコントロール力も必要になります。
逆にコストの低い素材は鳴らしやすさと扱いやすさが重視されていますので初心者には最適です。
初心者向けのものから順に、素材別の特徴をご紹介します。
白銅
10万円以下のフルートに多い銀色の素材。
キュプロニッケルとも呼ばれる、銅とニッケルの合金です。
銀が使われていないので楽器が軽く、音色も軽くて明るくなります。銀のような音の深みはありません。
耐久性にも優れ、少しの息でしっかり鳴るので小さなお子様や初心者におすすめです。
音量や音色のコントロール幅が狭いため、上達して大きな音を出そうとすると音が割れたり奏者の要求に応えきれないことも。
洋銀(洋白)
10万円以下のモデルや中級モデルのキイにもよく使用される銀色の素材。
ニッケルシルバー、ジャーマンシルバーとも呼ばれる、銅とニッケルに亜鉛を加えた合金です。
同じく銀は含まれておらず、白銅と似た性質を持っていますので音色も似ており比較的初心者向けとなります。
わずかに華やかな音色にはなりますが、鳴らしやすさやダイナミクスの幅、コントロール性は白銅とほぼ変わらないのが実情です。
手汗などの酸に弱い傾向にあり黄色っぽく変色しやすいため、メッキがかかる部分に使用される事が多いです。
銀
他の金属に比べて柔らかく丸みを帯びた音色になります。音色と音量の変化が付けやすく、多彩な表現が可能に。
しっかり吹き込んでも音が潰れたり割れたりしにくく、豊かな響きで応えてくれます。
ただし酸化/硫化しやすいため変色も頻繁に起こる傾向にあります。
部分的に銀を使用したモデルも普及しており、音への影響が大きいとされる口元付近から順に銀へグレードアップされます。
それ以外の部分は白銅や洋銀である事が多く、鳴らしやすさと美しい音色をバランス良く兼ね備えた初〜中級者向けの楽器となります。
・リッププレート/ライザー銀製…口に当てる楕円形の吹き口(唄口)のみが銀製 おおよそ8万円〜
・頭部管銀製…唄口に加え、唄口が付いている管が銀製 おおよそ10万円〜
・管体銀製…キイを除く管がすべて銀製 おおよそ20万円〜
・総銀製…キイも含め、金属部分がほぼすべて銀製 おおよそ40万円〜100万円近いものまで
頭部管銀製や総銀製といってもヘッドキャップは体積が大きいため素材自体は銀ではないものもあります。
細かく分類すると銀にも純度によって種類があり、銀含有率が高いほど銀の特徴が生きてきます。
ただ、銀100%だと柔らかすぎるため銅などを混ぜて強度を出しています。
・スターリングシルバー 銀純度92.5%
・ブリタニアシルバー 銀純度95.8%
・メタライズドシルバー 銀純度99.7%
スターリングシルバーが最も一般的ですが、中〜上級者向けモデルの一部には純度95%以上の銀が使用されていることも。
銀製の部分には「SILVER925」や「Ag925」といった刻印がされることがほとんどです。
金
明るく煌びやかで、倍音豊かな力強い音色が特徴。ピアニッシモでも艷やかな密度のある音で響きます。
銀よりも重く、技術と息のパワーが必要になるためかなり上級者向けの素材となります。
金の純度が高くなるにつれ、吹きこなすためにはより一層の体力やコントロール技術が必要ですが
その中でも9K以下のものや10Kのモデルであれば吹き心地も比較的軽く、体力に自信がない方や初めて金製にチャレンジする方にもおすすめ。
また、キイは鳴らしやすい銀製のまま管体だけを金製にしたようなモデルも普及しています。
フルートに使われる金の純度にも種類があり、やはり金100%では柔らかすぎるのでチタンなどの混ぜ物をして硬度を出しています。
・〜K9(9金) 金純度〜37.5%
・K10(10金) 金純度41.7%
・K14(14金) 金純度58.5%
・K18(18金) 金純度75%
・K24(24金) 金純度99.9%
一般的にはK14やK18が使われることが多く、金製部分には「K14」「K18」などの刻印が入ります。
金の価格相場の変化により楽器の値段も時期によって変わることがありますが、金が使われる楽器は軽く100万円は超えてきます。
木
ピッコロやクラリネットと同じ「グラナディラ」という黒い木材が使われることが多いです。
希少な木材であり、プロや上級者に向けて作られた精巧なハンドメイドモデルも多数。
天然素材につき水分と温度差によって割れやすいためお手入れと扱い方をマスターすることも大切です。
「ポー」という木製管らしい暖かく素朴な音色が特徴的で、響きも良く馴染みやすいことからオーケストラでもよく使われます。
ただ、音量はあまり出せず音色の変化も控えめなので目立つような明るさはありません。
キイや管体の胴輪など細かいパーツは銀や金などの金属で作られており、管体がグラナディラのフルートは100〜200万円またはそれ以上の値段が一般的です。
銀、金製フルートをメイン楽器とする方が2本目のサブ楽器として持たれたり、音色に惹かれ趣味で購入される方もいらっしゃいます。
プラチナ
銀がやや黄色っぽい銀色なのに比べ、プラチナはやや黒っぽく冷たい色味の銀色であるのが特徴。
高級モデルのメッキとして塗装に使われることはよくありますが、素材として使用されることは稀です。
重厚感あふれたダークな艶のある音色で、輪郭が非常にはっきりとした立ち上がりの良い音となります。
金よりもさらに重量が増し、抵抗感もかなり強めですが銀製/金製とは一味違った凛々しさが魅力ですが
かなりパワーのあるプロ奏者でないと美しく吹きこなすのは難しいとされます。
金と同じく価格は時期によって変化することはありますが、管体のみがプラチナの楽器でもおおよそ700万円以上になります。
このように、それぞれの素材ごとに適した奏者レベルや吹き方がありますが白銅/洋銀/銀は比較的鳴らし方が似ていてグレードアップしやすい範囲ではあります。
一方、金/プラチナ/木製のフルートはそれらと同じ奏法では吹きこなせないと言われています。
自分のレベルに合った素材や目指したい音色を踏まえ、購入前に試奏で吹き比べてみるのもおすすめです。
初めてでお店に行くのは緊張するけどどんな楽器を選べば良いか分からない…という場合はおすすめのモデルをお調べいたしますのでお気軽に弊社管楽器担当までお尋ね下さい。