Grand Concert Custom 音の歴史
現代においてクラシックギターと呼ばれているものの基本形は、19世紀にスペインのギター製作家アントニオ・デ・トーレス(ANTONIO DE TORRES:1817~1892)によって作られました。そのスタイルや技術は、彼に影響を受けたスペインの製作家達に受け継がれ、その後、スペインから世界へと広まっていきました。
1966年4月、ヤマハはギター研究課を新設し、手工ギターの研究開発をスタート。同年10月から翌'67年にかけて、トーレスの流れを汲むスペインの名工エドアルド・フェレールを当社(浜松)に迎え、スペイン伝統の製法の技術指導を受けました。
このときに学んだ職人達の手により、'67年11月にGrand Concert Guitarの初期モデルGC-5, GC-7, GC-10が誕生しました。正統派スペイン流儀に基づいたこの3モデルは、その後の日本製ギターに大きな影響を与えました。この後も、このスペイン正統派の伝統的な製法をベースに試作と研究を繰り返すことで、我々は材料や構造と音との関わり、製作工程と音との関わりなどを、徐々につかんでいったのです。
1972年、ヤマハは一人の技術者をスペインに送りました。彼は手工ギター職人エドアルド・フェレールとマヌエル・エルナンデスに師事し、本場の風土の中で2年半にわたり製作技術を学びました。さらに'73年にはエルナンデスが来日し、浜松で技術指導を行ないました。これが新たな音作りの原点となり、我々はタイプの異なる音色を求め、研究・開発を続けました。そして1974年、カスタムギター GC-30A/30B/30C の3タイプの個性ある音色のギターを発表しました。GC-30Aは、それまでのGCシリーズで蓄積してきた技術の集大成とエルナンデスに学んだ製法を融合し、ヤマハオリジナルサウンドの最高峰として開発したモデル。GC-30Bは、エルナンデスの製法や考え方を投入し、スペインの音色を追求したモデル。GC-30Cは、時間が経過したギターの音に魅力を感じ、スペインの名工マルセロ・バルベロの音を参考に独自に開発したモデル。これら3タイプの音は、さらに研究・改良され、1983年に発売されたGC-50/60/70、GC-61、GC-62へと受け継がれています。また同じ1983年には、著名な演奏家アンドレス・セゴビアに絶賛されたモデルGC-71も発売されています。
音へのこだわりは、新しい技術をも生み出しました。2001年には、新技術とカスタムギターで培った技術を踏襲した高級ギターGC-11/21/31/41を発表しました。
ヤマハGrand Concert Guitarのルーツは、ギターの母国スペインです。我々は現在も、本場スペインの明るい音色を追求し、音にこだわり、妥協を許さず、演奏者の方々に喜んでいただけるギターの製作を続けています。
セラック塗装とは
ラックカイガラ虫の分泌する樹脂状物質を原料とした天然塗料です。薄い塗膜を重ね塗りするため、音の立ち上がりがよく、材をよく響かせます。また、木材の呼吸を妨げないので、弾き込むほどに音に甘さと伸びが生まれ、その色合いも年月とともに深くなり独特の雰囲気を醸し出します。セラック塗装仕上げは、塗膜が薄く、熱に弱いためデリケートです。メンテナンスについては、ギターに付属の取扱説明書をよくお読みの上注意して行なってください。
表板の松材と米杉材の違い
材料 |
松 (spruce)
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米杉(western redcedar) |
備考 |
産地 |
ドイツ松:ヨーロッパのアルプス山脈
えぞ松:北海道大雪山周辺
スプルース:ヨーロッパ、カナダ、アラスカ
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カナダ |
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材色 |
淡白色
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茶褐色
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表板の色の違いは材色の違いによるものです |
比重 |
0.35~0.45 |
0.30~0.40
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米杉の方が少し軽い |
材質 |
ヤニ分が多く粘りがある |
木目が素直で柔らかい |
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音色 |
芯のある透明感
音に重量感あり
爪のタッチによる音色の変化が大きい
弾き込み効果による音の変化が大きい
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明るく暖かみのある音
音のレスポンスが良い
高音がやや太く、松より音量がある
弾き込みによる音の変化が少なく完成度が高い
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【ご注意】
ワシントン条約で輸出入が規制されております希少材ハカランダを使用したギターは、国内においてのみ使用することができます。海外への商業目的の持ち出しはできませんのでご注意ください。
※対象品番:GC70、70C、71、60、61、62、50、50C、FC50